日本の教育制度と教育実践
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1 Ⅷ 教員資格・養成・任用・研修 Ⅷ 教員資格・養成・任用・研修


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2 Ⅷ 教員資格・養成・任用・研修 Ⅷ 教員資格・養成・任用・研修 3
4  教師は、人間がこれまでの営みの中で創造し、蓄積してきた科学・芸術・文化を子どもの発達段階に応じて編成した教育的価値を教育内容とし、それを子どもに教え、子どもはそれを学ぶことによって将来の職業を選択し、また生活を設計する能力を身につける役割を持つ。教師の専門性は教える教育内容についての深い理解と子ども理解に立って、授業、つまり教育活動を展開する力量を持っていなければならない。国は、国際的視野のもと、得意分野を持った個性豊かな実践的指導力のある教師が求められるとし、画一的な教師像を否定している。
 近年、教師の指導力不足が指摘され、これまで尊重されてきた教師の身分に変化が生まれてきた。また人事考課など教員評価のシステムを明確にして教師の指導力を高める施策が展開されている。
 教師の指導力は、教師としての自覚などを含めて考えようとするのが日本の特色である。
 専門性を確保するために、教員養成を大学で行うこととし、ナショナルスタンダードとして免許状所持を資格としている。また専門性の維持、向上のために研修制度を整備している。
 人事考課など教員評価を導入したり、10年経験教員研修の導入に見る評価による資質能力の向上を図るなど、専門性を高める方策を採っている。
Ⅷ 教員資格・養成・任用・研修 Ⅷ 教員資格・養成・任用・研修  ここでは非常勤講師制度について説明する。
 担任できる教科等は次の通り。
小学校:全教科の領域の一部、クラブ活動
中学校及び高等学校:各教科の一部、総合的な学習の時間及び道徳の一部
特殊教育諸学校:各教科の一部、クラブ活動(小学校)、総合的な学習の時間及び道徳の一部
 活用状況は、平成15年度で小学校8,249人、中学校3,324人、高等学校8,589人、特殊教育諸学校230人で総計20,392人。
特別非常勤講師の職業等は次のようになっている。小学校:和太鼓保存会指導者、木工所所長、町民講座講師、中学校:OAインストラクター、スポーツインストラクター、茶華道教授、能楽師、高等学校:NPO職員、福祉施設職員、看護師、ホテル料理長、特殊教育諸学校:医師、薬剤師、理学療法士
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 教員免許状には、普通免許状、特別免許状、臨時免許状がある。このうち普通免許状は専修免許状(基礎資格:修士)、1種免許状(基礎資格:学士)、2種免許状(基礎資格:準学士)の3種とする。臨時免許状の有効期間は3年又は5年である。
 特別免許状制度は、教員免許状を持たず、教職を希望する各種分野ですぐれた知識経験や技術を持っている社会人に対して都道府県教育委員会が行う教育職員検定により特別免許状を授与し、教諭に任用する制度である。この制度は1988年の教育職員免許法改正によりスタートした。平成16年度現在までの特別免許状授与研修は113件で非常に少ない。これまで免許状を所有していないと非常勤講師ができなかったが、この枠もはずされた。 
 臨時免許状は、普通免許状を有する者を採用することができない場合に限り、教育職員検定に合格した者に与えられる。
 教員の免許状には修士課程(修士)及び講習等を受けそれに相当すると認定された者に与えられる専修免許状、4年制大学(学士)で所定の単位を取得し、または講習等を受けそれに相当すると認定された者に与えられる一種免許状、短期大学(準学士)で所定の単位を取得した者に与えられる二種免許状の三種類がある。
 専修免許状を取得するには、教科に関する科目34単位、教職に関する科目41単位、教科又は教職に関する科目8単位、一種免許状は、それぞれ10単位、41単位、8単位、二種免許状は、それぞれ2単位、31単位、4単位である。
6  戦前は師範学校で教員養成が行われていた。戦後は、教員養成は大学で行うこと、教員養成を目的にした大学だけではなく、文部科学大臣から教職課程認定を受けた大学でも養成することができる開放制がとられた。
 教職が高い専門性を求め、大学で行う教育の程度が相当だと認識されたからである。
 現在、養成教育は実践的指導力の基礎を重視したカリキュラムとして展開されている。実践的指導力とは、知識を教える力量だけでなく、その過程で学習指導や生活指導において子ども理解に立ち、子どもとのコミュニケーションをつくりうる力量を通して子どもを指導できる力量である。養成教育では実践的指導力の基礎を身に付けさせるために教職科目を重視している。
 また養成教育は、任用、現職教育との連続性を図り、教師教育の一過程と考えられ、その観点から養成教育が展開している。
Ⅷ 教員資格・養成・任用・研修 Ⅷ 教員資格・養成・任用・研修  特殊教育諸学校の教諭(盲学校教諭、聾学校教諭、養護学校教諭)の免許状は、基礎資格のほか、特殊教育に関する科目を、専修免許状で47単位、1種免許状で23単位、2種免許状で13単位を修得しなければならない。 7
 教員養成の課程として、大学461 校、短期大学398 校、大学院214 校、大学の専攻科69校が認定されている。(平成10年現在)
 免許状の授与を受けるのに必要な科目は、各大学の授業科目として開講される。
●教科に関する科目
 教科に関する科目は、小学校では、国語(書写を含む)、社会、算数、理科、生活、音楽、図画工作、家庭、体育である。中学校、高等学校では、それぞれ、教科・分野毎に定められている。
●教職に関する科目
 教職に関する科目は、主として
  ・教職の意義等に関する科目
  ・教育の基礎理論に関する科目
  ・教育課程及び指導法に関する科目
  ・生徒指導、教育相談及び進路指導等に関する科目
  ・総合演習
  ・教育実習
●教科又は教職に関する科目
 「教科又は教職に関する科目」は、各大学が「教科又は教職に関する科目」として独自に開講する授業科目や、「教科に関する科目」「教職に関する科目」として開講されている授業科目の単位を必要数以上修得すると充当される。
●特殊教育に関する科目
●養護に関する科目
●養護又は教職に関する科目
●栄養に係わる教育に関する科目
●栄養に係わる教育又は教職に関する科目
●教育職員免許法施行規則第66条の6に定める科目
 大学における教員養成課程全体の入学定員は、少子化に伴う教員就職率の低下を踏まえ、平成10年度から12年度までの3年間に約5千人の削減が行われた。現在、公立学校の教員の定年退職者の増加や都道府県における教員配置基準の改善に伴い、教員採用数が増加している。しかしながら、ペーパーティーチャー、各学校における教員の年齢構 成のバランスなどの問題を抱えている。
8  教員養成において、教育実習は実践的指導力の基礎を修得するためにきわめて重視されている。教育実習期間の延長などを通して、その改善が行われている。現在教育実習は、小学校5単位、中学校5単位、高等学校3単位、特殊教育諸学校5単位である。小・中学校普通免許状を得るために介護等体験(7日間)が1998年度から義務づけられた。その目的は「義務教育に従事する教員が個人の尊厳及び社会連帯の理念に関する認識を深めることの重要性にかんがみ、教員としての資質の向上を図り、義務教育の一層の充実を期する」(小学校及び中学校の教諭の普通免許状授与に係る教育職員免許法の特例等に関する法律)
①オリエンテーション(校長の話)、2005年5月
②担任と打合せ、2005年5月
③公開授業(社会 中学1年生 2005年6月)
④公開授業(音楽 中学2年生 2005年6月)
⑤公開授業(体育 中学1年生 2005年6月)
⑥公開授業・学習指導案(美術 中学2年生 2005年6月)
Ⅷ 教員資格・養成・任用・研修 Ⅷ 教員資格・養成・任用・研修  基本的に、教員の免許状は、大学での所定科目の履修がその条件とされているが、教員資格認定試験に関しては、1964年の免許法改正により、高等学校技能教科(柔道・剣道・計算実務)などの特定の教科に関して特例が設定された。そして、1973年の免許法改正で、教育界に広く人材を求めるとの趣旨に基づいて、小学校教員、高等学校教員、特殊教育教員(養護訓練=聴覚障害および肢体不自由教育)にまで、そ の適用範囲が拡大されている。 9
 教員資格認定試験は、大学の養成で十分でない分野での教員を確保するために行う試験である。
 小学校では教諭二種免許状が与えられる。高等学校では、看護、情報、福祉、柔道、剣道、情報技術、建築、インテリア、デザイン、情報処理、計算実務の種目試験があり、それに合格した者に各種目の高等学校教諭一種免許状が、特殊教育諸学校では、自立活動(視覚障害教育)、自立活動(聴覚障害教育)、自立活動(肢体不自由教育)、自立活動(言語障害教育)の種目試験があり、それに合格した者に各種目の一種免許状が、 それぞれ与えられる。
 たとえば小学校の教員資格認定試験は、三つの段階を踏んで行われる。第1次試験では、教職教養、教科の指導法、基礎的な教科内容、一般教養科目が、第2次試験は、教科専門事項と実技試験が、最終試験では指導の実践に関する事項がそれぞれ課される。
 平成16年度の小学校教員資格認定試験では169人が合格している。11.8倍の高い倍率である。
10  任用とは、採用、昇任を意味し、教育職員の任用に当たっても、一般行政職員と同様に、受験成績、勤務成績その他の能力の実証に基づくことが法定されている。しかし、試験の方法は一般行政職員と異なっており、競争試験ではなく「選考」によるものとされている(教育公務員特例法第13条1項)。選考とは、一定の基準と手続きによって、学力、経験、人物、慣行、身体等を審査することとされている。
 選考に関しては、大学附置の学校以外の公立学校では、任命権者である教育委員会の教育長が、大学附置の学校では大学の学長が、大学附置学校以外の国立学校の場合には文部大臣がその選考を行うこととされている(教育公務員特例法第13条1項)。
 教員の採用試験は、学力試験、面接試験、実技試験などを通して、教員としての力量、意欲、使命感などを判断する。入職後の1年間の身分は条件付採用で、その間は初任者研修を受ける。
Ⅷ 教員資格・養成・任用・研修 Ⅷ 教員資格・養成・任用・研修  授業、生徒指導などの教育活動には、その準備としても、またそれらを実施する過程で起こる諸問題や課題を解決するためにも、さらに新たな教育の変化を知り、教育活動に反映、充実させるためにも研修・研究は不可欠である。研修は修養と研究を合体した用語である。修養とは教師としての自覚や使命感、保護者・社会に対する責任感を深め、職業的・社会的責任を果たすことにかかわるものである。研究は、教育は知識や技能を子どもの発達段階に応じて身に付けさせることであるから、教材開発を含む教材研究、子ども研究などが不可欠である。
 そのため研修は、教育公務員特例法教員が規定しているように教員の職務の一環として理解される必要がある。
 研修には本来、自主的に進めなければならない。しかしそれには限界があること、また教育行政や学校の必要から校内研修、行政研修、大学・大学院等への派遣研修などの機会がある。 
 評価に基づく研修は最近導入され始めた。
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 県費教職員の人事事項としては、教員の任用(採用、昇任 )、降任、処分などがある。市町村立学校の管理については設置者管理主義をとっている。しかし人事権には及ばない。人事権は都道府県教育委員会・指定都市教育委員会にある。その理由は給与はこれらの教育委員会が負担していることのほか、教職員の適正配置、人事交流の広域化・円滑化を図る観点もその理由とされている。
 しかし教員を日常的に観察し、その実態を知っているのは校長であることから、人事に関して校長の意見具申が尊重されるようになった(地方教育行政法大第38条)。
 最近、県費教職員教員の人事について地方分権の観点から市町村教育委員会がその権限を拡大すべきだと言われている。
①茨城県教育研修センター
②茨城県水戸市総合教育研究所
③茨城県自然博物館
④独立行政法人教員研修センター
12  教育委員会や教員研修センターが行う研修には、教職経験に応じた研修(経年研修)や職能に応じた研修などの基本研修のほか、教科等の研修や教育課題に対応した研修などの専門研修がある。講義や演習の授業形態のほか、課題を提出させ、それをめぐってデスカッションする形態もある。中央研修では3週間を超える長期にわたる宿泊研修を行っている。教育委員会などの研修にも宿泊を伴うものがあるが、短期である。
 教育委員会は、自ら研修を実施したり、大学や企業等への派遣を行っている。最近大学院修学休業制度をつくり、大学院で多くの教員が学びやすいよう法整備を行った。
Ⅷ 教員資格・養成・任用・研修 Ⅷ 教員資格・養成・任用・研修 ①新任小学校校長研修講座(組織マネジメント演習 2004年11月)
②小学校10年経験者研修(生徒指導に関する講演 2004年10月)
③美術科教材開発・実技研修講座(土を使った造形 2004年11月)
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解説なし。 ①美術科教材開発・実技研修講座(身近なものからはじめる鑑賞 小・中・高校教師:生徒の作品を説明して、感想を述べる 2004年11月)
②小中学校の現職教員に対する英語研修(茨城県水戸市幼・小・中学校英語教育特区 2004年2月)
14  教育相談(中級)研修講座(教職研修)教育相談事例研究:小・中・高校・養護学校の教師が参加している。(市町村単位の研修では、教育段階間の教師が接する機会がないため。)(2004年11月) Ⅷ 教員資格・養成・任用・研修 Ⅷ 教員資格・養成・任用・研修  校内研修は、我が国の学校で長い間行われ、蓄積されてきた伝統であり学校文化である。
 校内研修は、教師の自覚や使命感の涵養、教師の指導力の向上、教育革新への対応、子ども問題の解決、学校の教育課題の解決、新たな教育改革への対応、教育委員会からの指定研究などを目的に行われている。
 校内研修は学校経営計画の中に位置づけられ、実施運営されている。そのために校務分掌組織として研修委員会を設置し、その責任体制を明確にしている。また研修に対する評価もそこで行う。これらを行う上で、研修・研究主任の役割・リーダーシップはきわめて大きい。そこに人を得ないと、堂々めぐりの研修に陥ってしまい、研究の進展がストップしてしまう。
 校内研修は、教師たちが自主的に行ってきた伝統を持っていた。組織的に校内研修を行うのはいいとしても、自分たちで自主的に行う校内研修が少なくなってきたことが気がかりである。
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①小学校初任者研修(情報教育に関する実習 2004年10月)
②中学校10年経験者研修(生徒指導に関する研究協議 2004年10月)
③中学校10年経験者研修(特別活動に関する研究協議 2004年10月)
④10年経験者研修(生徒指導についての講話 2004年10月)
 校内研修においては、学習指導や生徒指導上の課題、評価の改善といった学校が直面する課題の解決を目指した、学校全体の教育実践の改善方策と、当該年度の学校教育目標と関わる形で研究主題が設定される。
16  校内研修の計画、実施運営は組織を通して行われる。研修委員会はその中心となって研修を推進する。校内研修は、学校経営計画の一部をなすから、そこには校長の経営方針、教育方針が反映されていなければならない。また研修委員会をリードし、研修を推進する者は研修主任である。
 研修主任には、校長の方針を受け研修計画を策定し、それを実現する組織をつくり、実施運営するリーダーシップが求められる。研修主任の力量、リーダーシップが校内研修運営に当たり決定的な意味を持っている。
Ⅷ 教員資格・養成・任用・研修 Ⅷ 教員資格・養成・任用・研修  楽しい国語科『読みの授業』(小学校サポート研修:指導主事が要請に応じて学校に出張する)小学校教師4名、中学校教師1名、指導主事1名(2004年11月) 17
①公開授業、5年 算数「面積」(2004年6月)
②研究発表、「子どもの豊かさに培う共生・共創の学び」 (2004年6月)
授業研究:4年生体育(フラッグフットボール)
18  学校の自主性・自律性を確立し、自律的学校経営を構築するために校長の役割、リーダーシップの発揮がとりわけ重要になる。そこには校長像の変容がある。教育専門家としての校長から経営力とリーダーシップを持った教育事業の経営者としての力量が求められるようになった。それは学校づくりのための総合的経営力だと言ってよい。学校運営協議会の法制化は、その法制の理解だけでなく、それを運営する力量が求められる。これはこれまでの校長の力量のカタログになかったものだけに、それを学び、実践化しうる力量はまったく新しいものである。ここにこれまでと違ったスクールリーダー研修の在り方が検討されねばならない理由がある。
 スクールリーダーは校長、教頭、主任、事務長など学校でマネジメントを担っている職務にある人を言うのが普通であろう。しかし狭義には校長、教頭に限定する場合もあるし、広義には指導主事や教育長を含めて言う場合もある。中教審は、スクールリーダーは校長・教頭など特定の職を指すものではなく、 指導的な教員を含めてそれらを総称する用語であるとしている。
Ⅷ 教員資格・養成・任用・研修 Ⅷ 教員資格・養成・任用・研修  新任小学校校長研修講座(組織マネジメント演習 2004年11月) 19
 スクールリーダー(校長)の研修内容は、図に示したように、マネジメントにかかわる事項である。これまでの校長研修では、これほどの内容を体系的に学ぶということはなかった。ここ10年の中で校長の役割変容が浮き彫りになり、それに伴う新たな力量が求められるようになったことが、こうした研修内容を求めるようになったと言える。
 研修の方法にしても、研修の目的が課題解決にかかわる経営力の育成であるから、自校の経営分析とそこでの課題の解決のために事例研究がとりわけ重要な研修形態となる。また企業研修は校長に自らの経営を振り返る絶好な機会となろう。
 教員給与については、これまで教員評価に基づく処遇の在り方、教員給与の国庫負担制度の在り方から論じられてきた。
 前者は、難度の高い仕事、複雑度の高い仕事をしているにもかかわらず、また努力が顕著な教員であるにもかかわらず、同じ給与になっていることへの反省から、年功序列による給与体系を変え、能力と実績に応じた給与体系とすることが行われつつある。
 後者は特に熱い議論を呼んでいる。2005年10月の中教審答申「新しい時代の義務教育を創造する」は教員給与について一般財源化せず国庫負担制度を堅持すると提言している。しかし政府は中学校については8500億円すべてを一般財源化する態度を明らかにしている。現在、県費教職員給与の半額を国が負担している制度を 根本から変えるもので、三位一体改革の一環である。
20  市町村立学校は市町村が設置・管理するものであるから、その教職員の給与は市町村が負担するのが原則であるが、市町村の財政力により教育格差が生じることをふせぎ、教育水準を全国的に一定の水準に保ち、その向上を図るために、教職員の待遇の適正を期し、教職員を適正に配置することなどが要請される。県費負担教職員制度は、これを担保するものである。
 県費負担教職員制度は、一定範囲の教職員給与を都道府県に負担させることとしているが、「義務教育費国庫負担法」第2条および「公立養護学校整備特別措置法」第5条に基づき、教職員給与の半額を国が負担することとされている。(ただし、教職員給与等の国庫負担額の最高限度が政令で定められている)
Ⅷ 教員資格・養成・任用・研修 Ⅷ 教員資格・養成・任用・研修   給与は、給料、扶養手当、調整手当、住居手当、通勤手当、産業教育手当、特殊勤務手当、超過勤務手当、特殊勤務手当、期末手当、勤勉手当などを含む、これらの総称である。
 教員給与は、その半額を国が負担することになっている(義務教育費国庫負担法)。この制度は、「義務教育について、義務教育無償の原則に則り、国民のすべてに対しその妥当な規模と内容とを保障するため、国が必要な経費を負担することにより、教育の機会均等とその水準の維持向上とを図ることを目的とする。」(同胞第1条)。これは補助金で使途が明示されている。補助金行政は地方の自主性をそぐことになり、行政改革が目指している地方分権の徹底とは相容れないものを持っていることから、これを廃止して一般財源化する方向が取られようとしている。中教審答申「新しい時代の義務教育を創造する」(2005年10月)は、現在の制度の死守を訴えているが、政府の方針 は別なところにある。
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 給与は、給料、扶養手当、調整手当、住居手当、通勤手当、産業教育手当、特殊勤務手当、超過勤務手当、特殊勤務手当、期末手当、勤勉手当などを含む、これらの総称である。
 教員給与は、その半額を国が負担することになっている(義務教育費国庫負担法)。この制度は、「義務教育について、義務教育無償の原則に則り、国民のすべてに対しその妥当な規模と内容とを保障するため、国が必要な経費を負担することにより、教育の機会均等とその水準の維持向上とを図ることを目的とする。」(同胞第1条)。これは補助金で使途が明示されている。補助金行政は地方の自主性をそぐことになり、行政改革が目指している地方分権の徹底とは相容れないものを持っていることから、これを廃止して一般財源化する方向が取られようとしている。中教審答申「新しい時代の義務教育を創造する」(2005年10月)は、現在の制度の死守を訴えているが、政府の 方針は別なところにある。
 教職員処分に関して、分限処分は公務の能率維持や適正な運営を、懲戒処分は制裁による公務員関係の維持が目的となっているものである。  教育職員に関しては、国家公務員法(78条、82条等)、地方公務員法(28条、29条等)で分限・懲戒が規定されている。
 分限処分には、免職・休職・降任・降給や失職などがあり、勤務実績不良、心身の故障、適格性欠如、過員等がその事由となる。その大半は、病気による休職処分である。
 懲戒処分は免職・停職・減給・戒告があり、その他に事実上の懲戒処分として訓告や始末書がある。その処分事由は、法令違反や職務上の義務違反、非行に限られる。実際には、争議行為や飲酒による交通事故・違反、体罰に対する懲戒処分が大多数を占めている。
22  分限処分には、免職・休職・降任・降給や失職があり、勤務実績不良、心身の故障、適格性欠如、過員等がその事由となる。懲戒処分は免職・停職・減給・戒告となっている。懲戒は、教員の身分に対する影響が大きいこともあり、その処分事由は、法令違反や職務上の義務違反、非行に限られている。
 処分に不服の場合、人事委員会等に対し不服申立てができる。
Ⅷ 教員資格・養成・任用・研修 Ⅷ 教員資格・養成・任用・研修 23
24  若い教師、とりわけ新任教師は学校で多くの悩み、困難、課題を多く抱えている。これをできるだけ克服し、一人前の教師として成長することが職能成長課題である。若い教師にとって初めて勤務した学校は第2の学校であると言われるほど、初任校は重要な意味を持っている。
 以前は新任教師は教職経験10年の教師と同じ仕事をしていた。そのため一人前の教師として扱われていた。ところが新任教師は指導力等で不十分であるため初任者研修制度が導入されることになった。60日間、学校内外で研修を積む。身分も1年間は条件付採用である。新任教師の職能成長課題は1年で乗り切れるものではない。3年前後かかると思われる。この間、学校は若い教師をどう育てたらよいか、校内研修の役割と校長のリーダー シップに負うところ大である。
Ⅷ 教員資格・養成・任用・研修 Ⅷ 教員資格・養成・任用・研修  現代の学校経営改革は、学校の管理者から教育事業の経営者、教育の専門家に加えてマネジメントの専門家として校長像の転換を促している。教育事業を経営するためには、校長自ら学校づくりのビジョンと戦略をつくる必要がある。これを可能にするには、教育だけでなく、それ以外の人間社会を考え、学び広い視野と深い洞察力を持つ必要がある。また学校経営計画、学校評価などについての専門的知識と技能が求められる。
 こうした知と技を身に付けるためには、経験やOJT、行政研修によるだけでは限界がある。こうした知や技は、大学院と連携して身に付けることが重要である。その形態は、大学院教育による育成のほか、大学院と教育委員会が連携して行う研修による育成がある。スクールリーダー大学院(教職大学院など)を設置して校長を養成する機運が高まってきた。岡山大学、千葉大学にはすでにその種の大学院が設置された。筑波大学も「スクールリーダーシップ開発専攻」を2006年度開設 に向けて準備している。
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 自律的学校経営の構築のために主任など学校ミドルは、これまでになく期待は大きい。それは経営スタッフとしての期待、部門組織でのリーダーシップへの期待、指導的教員としての期待である。ミドルは、メッセンジャーとしてあるのではない。学校の経営陣の一員をなす者として、現場を観察し、また教師の活動状況を把握しながら、現場の問題や課題を見出し、そこから学校経営の課題を見出す力量が必要とされる。現場主義の重視である。発信型のリーダーとして、彼への期待は大きい。
 ミドルはマネジメント型リーダーと専門職型リーダーに分けて考えることができる。
 10年経験者研修が制度化された。これは10年を経た教員に対して個々の能力、適性等に応じて資質・能力を向上させるために任命権者が行うもの。この研修は、評価に基づく研修であり、これまでの研修観・スタイルを転換させるものである。つまり教師が研修課題や研修計画をつくるに当たり、相談に乗り、指導と助言を行う プロセスを経て研修に参加するようになった。
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