CRICED University of Tsukuba

筑波大学教育開発国際協力研究センター Center for Research on International Cooperation in Educational Development

速報つくば掲載記事(平成17年)

第22号
(平成17年12月14日
通巻1114号)

アフガニスタンの障害児教育に関する講演会の開催について -教育開発国際協力センター-

  アフガニスタンの障害児教育に関する講演会を開催します。講演者はJICA(国際協力機構)派遣短期研修生として同センターで研修中の カブール教育大学障害児教育学部のモハマド・ナイーム・ラスーリ講師です。アフガニスタンの障害児教育はいまだに十分に整備されていませんが, 公立の盲学校1校と私立の聾学校1校があります。そのほかに国際的な援助団体の支援を受けた小規模の障害児教育のための学校(テントの教室もあります。)があります。 日本をはじめ国際機関の援助で運営されているカブール市内の私立聾学校を中心にビデオや写真をまじえてアフガニスタンの障害児教育について講演していただきますので, ふるってご参加ください。

日  時:12月21日(水)13:30~16:00
場  所:人間系学系A棟101
講 演 者:モハマド・ナイーム・ラスーリ講師(カブール教育大学障害児教育学部,JICA短期研修生)
通訳:アマディヤールM. ジャファール氏((財)日本国際協力センター)
演  題:アフガニスタンにおける障害児教育の現状
問合せ先:竹内康二研究員(E-mail:takeuchi@criced.tsukuba.ac.jp)
教育開発国際協力センター(TEL7287)
第20号
(平成17年11月16日
通巻1112号)

ドミニカ共和国算数指導力向上プロジェクトJICA研修生が工藤典雄副学長を表敬訪問 -教育開発国際協力研究センター-

  教育開発国際協力研究センター(CRICED)では,平成13年から国際協力機構JICAによるホンジュラス国算数指導力向上プロジェクトに協力し, その成果は外務省のODA白書に日本の協力の代表例として紹介されるなど,高い評価を受けています。 日本の算数教育経験を生かし,指導書・教科書を開発し,授業研究という日本型教員研修方法を普及するホンジュラス国算数指導力向上プロジェクトが 世界的に評価された実績をふまえ,JICAでは同プロジェクトを中米4ヵ国エルサルバドル,ニカラグア,ドミニカ,グアテマラへ拡大しました。 その一貫として招へいされたドミニカ共和国研修生4名が今回来学しました。 研修は,10月25日より3週間実施されました。 初日に研修生は,工藤典雄副学長(国際担当)を表敬訪問し,今後筑波大学がJICAと連携して同国の算数・数学プロジェクトを推進することが確認されました。 その後,研修生4名は,附属小学校算数部及び筑波大学で研修を実施し,プロジェクトの詳細についての協議を,プロジェクトを担当する礒田正美助教授(人間総合科学研究科),坪田耕三附属小学校副校長等と行いました。 県内からは,茨城県教員研修センターとつくば市教育委員会から支援をいただきました。
都築智国際交流推進課長,永井JICA筑波センター所長,Rosario国家教員養成機関(INFOCAM)コーディネ
               ータ,工藤典雄副学長,礒田正美助教授
左から,3人目都築智国際交流推進課長,永井JICA筑波センター所長,Rosario国家教員養成機関(INFOCAM)コーディネ ータ,1人おいて工藤典雄副学長,右端は礒田正美助教授
第17号
(平成17年10月5日
通巻1109号)

文部科学省大臣官房国際課国際協力政策室一行が工藤典雄副学長及び油田信一副学長を表敬後,教育開発国際協力研究センターを訪問

   教育開発国際協力研究センターの招聘により,9月6日に文部科学省大臣官房国際課中津健之国際協力政策室長,吉澤菜穂美企画調査係長,白井憲地域第一・第二係長が工藤典雄副学長(国際), 油田信一副学長(研究)を表敬し,文部科学省の施策と本学の国際協力の展開について懇談しました。一行は,その後,教育開 発国際協力研究センターを訪問し, 現在,同センターが担う初等・中等教育,教師教育分野における国内の中核センターとしての役割の重要性を確認するとともに,今後の国際教育協力のための拠点システム事業の発展への期待を述べました。
油田信一副学長,工藤典雄副学長,文部科学省大臣官房国際課国際協力政策室中津健之室長,同吉澤菜穂美企画調査係長,同白井憲地域第一・第二 
               係長,本学赤塚義英総務・企画部長
左から本学の取り組みを述べる油田信一副学長,工藤典雄副学長,文部科学省大臣官房国際課国際協力政策室中津健之室長,同吉澤菜穂美企画調査係長,同白井憲地域第一・第二 係長,本学赤塚義英総務・企画部長

モンゴルにおける障害児教育協力に関する調査

   文部科学省平成17年度新世紀国際教育交流プロジェクト学者・専門家等交流派遣事業により,中田英雄教育開発国際協力研究センター長,草野勝彦教授(宮崎大学),吉澤菜穂美文部科学省大臣官房国際課国際協力政策室企画調査係長,佐藤学総務・企画部国際交流推進課学術交流係長は,9月12日~19日までウランバートル市内の国際協力機構(JICA)モンゴル事務所,モンゴル教育・文化・科学省,モンゴル教育大学,モンゴル教員養成大学,国立第29聾学校,国立第116盲学校,国立第10幼稚園,国立第55養護学校を見学し,障害児教育に関する基本的な調査を実施しました。JICAモンゴル事務所では,1990年からJICAが取り組んできた教育,農業,鉱業, 経済,環境などの分野における協力事業について神崎義雄所長から説明を受けまし た。教育分野では,教員再訓練プロジェクトが2003年~2006年までの予定で実施 されています。このプロジェクトに障害児教育の教員も参加できるようにお願いしました。教育・文化・科学省,大学,特殊教育諸学校を訪問した結果,障害の重い子どもが学ぶ学校がないこと,障害児教育システムが未整備であること,障害児教育の専門家が不足していることがわかりました。リハビリテーションの理念や 意義が行き渡っていないために理学療法士や作業療法士などを養成する機関がないこともわかりました。教育大学や教員養成大学に障害児教育教員養成学科の設置が望まれます。盲学校と聾学校は全国に1校しかなく,盲学校の児童は75人,教師は29人,聾学校の児童は460人,教師は68人でした。地方出身の40人の盲児と180人の聾児は寮生活をしています。聾学校には医師が2名常駐していました。両校ともベテランの教頭や民主化前にソビエトの大学で障害児 教育(欠陥学)を学んだ年輩の教師が校内研修などを通じて若手教員を指導していました。第10幼稚園はモンゴル唯一の運動障害児のための学校で,3歳から14歳までの120名の幼児と児童が在籍していました。2名の女性がJICA青年海外協力隊員として勤務し,脳性まひ乳幼児の早期療育に熱心に取り組んで いました。第55養護学校は,貧困家庭の児童生徒やドロップアウトした児童生徒のほかに,知的障害児が在籍していました。重度の知的障害であると紹介された児童が掛け算を勉強していました。知的障害があるかどうかを診断する専門家がいないこと,心理検査や知能検査が普及していないことが課題であると思われました。国立の盲・聾・養護学校が施設設備や教材教具,専門家の不足に悩みながらも全国のセンター的な機能を果たしていることがわかりました。これらの学校がさらに高い機能を持つようにJICAや文部科学省拠点システムを通して教育協力を推進していきます。今回の調査では元本学留学生のモンゴル教育・文化・科学省教育研究所Dr. Odgerel Dandii研究員と同研究所のDr. Battuya研究員の協力を得て行われました。
国立第29盲学校
国立第29盲学校
国立第116聾学校
国立第116聾学校
国立第10幼稚園
国立第10幼稚園
国立第55養護学校の二部制時間割
国立第55養護学校の二部制時間割
第15号
(平成17年9月7日
通巻1107号)

算数・数学教育及び情報教育におけるボスニア・ヘルツェゴヴィナ国との協力
-教育開発国際協力研究センター(CRICED)連携融合事業-

  教育開発国際協力研究センター(CRICED)では,7月11日~20日,国際協力機構(JICA)と進める連携融合事業(5年計画の初年度)の一環としてボスニア・ヘルツェゴヴィナ国より Marinko PEJIC教授(サラエボ大学教育学部,数学教育),Niko SUSAC氏(モスタル教育省視学官,数学会会長),Djuradj PUHELIC氏(スルプスカ共和国教育省視学官,職業教育)の 3名の研究者を招聘しました。
   CRICEDでは,昨年10月よりJICAの依頼により同国を対象とする算数・数学教育及び情報教育分野のICT(情報通信技術)研修を実施しています。 教育協力教材の開発を目的とする連携融合事業では,同国の関係者と本学関係者との協力・連携を図り,今後の教材開発推進をすることが課題になります。 3名の研究者は,滞在中,附属小学校,附属中学校,附属高等学校の関係授業を参観し,日本の授業に対する理解を深めるとともに, 「ボスニア・ヘル ツェゴヴィナセミナー」を開催し,両国のICT 利用教育の課題を共有しました。さらに,JICA本部,JICA筑波国際センター,筑波学院大学,ボスニア・ヘツェゴビナ大使館関係者とともに, 今後の協 力・連携の方針を検討し,同国の復興に役立てるべく,8月に研修を終え帰国する第一期教員及び今回招聘した研究者,本学CRICEDが協働して算数・数学 教育,情報教育分野における ICT教材共同研究開発を推進することで同意し,推進計画書を作成しました。
Marinko PEJIC教授,Niko SUSAC氏及びDjuradj PUHELIC氏
左から,Marinko PEJIC教授,Niko SUSAC氏及びDjuradj PUHELIC氏

バヌアツと我が国の教室間を結ぶインターネットライブ授業を実施 -教育開発国際協力研究センター

  教育開発国際協力研究センターは,文部科学省国際教育協力のための拠点システム構築事業「青年海外協力隊派遣現職教員支援課題」(代表:礒田正美助教授(人間総合科学研究科))の一環として, 7月12日,バヌアツと秦野市の小学校間でインターネットを利用した国際交流授業を実施しました。この課題では,派遣 現職教員による教育協力経験を日本の教育へ還元するモデル事例の開発を進めています。 今回の授業では,バヌアツのラカトロ小学校と秦野市立鶴巻小学校の6年生間で,派遣教員・帰国教員の通訳を介して地理や食物についての子ども間での交流を行いました。 その結果,子どもたちは双方の文化に触れる意欲を高め,自国の文化や自分自身の生活や社会について振り返ることができ,次回授業への継続課題を設定できました。    文部科学省では,現在進行中の教育課程改定に臨んで,「国際理解教育」から「国際教育」への転換を謳い,派遣現職教員の経験の活用を提案しています。 今回の授業は,その提案に対する先進的モデルを提供します。
バヌアツの家屋根の材料(ナタングラの葉)と日本の浴衣で自己紹介しあう子ども
バヌアツの家屋根の材料(ナタングラの葉:中央)と日本の浴衣で自己紹介しあう子ども(右)

アフガニスタンにおける障害児教育協力 -教育開発国際協力研究センター

   中田英雄教育開発国際協力研究センター長は,7月18日~8月1日まで, 平成17年度連携融合事業のJICA短期専門家としてアフガニスタン教育大学特殊教育学部を訪問しました。 今回の訪問は3度目になります。その主要な目的は,カブール教育大学における障害児教育の内容及び指導方法の拡充を図ることです。 4月に訪問した際にアフガニスタン高等教育省はカブール教育大学に特殊教育学部の設置を認可し,スタッフ5名が決まりました。 バヤン学部長代行(教育開発 国際協力研究センターに平成16年10月~平成17年1月まで外国人研究員として滞在)は,アフガニスタンの障害児教育や障害児教育入門などの教科書の編集をしており, 年内に脱稿する見通しです。バヤン学部長代行とスタッフは,アフガニスタン国内のNGO関係者と協力してアフガニスタン手話事典を編集しました。 これはアフガニスタンの聴覚障害児や聴覚障害者にとって,福音となることでしょう。JICAアフガニスタン事務所の松島正明所長に手話事典の出版を強く請願しました。 中田センター長は,カブール教育大学の学生を対象に障害児教育の授業を2回行いました。食い入るような学生の授業態度に圧倒され, 学生からの質問は途切れることがなく堰を切ったように手が上がりました。学生には,現職教員や他の有職者も含まれています。次回もこのような授業を計画しています。 カブール教育大学の施設設備は,長い戦乱で破壊し尽くされています。JICAの支援で物理の実験機材が整備されましたが,焼け石に水のような状況です。 カブール教育大学の図書館には約1,000冊しか図書がありません。一方,本学には200万冊を超える蔵書があります。 バヤン学部長代行と特殊教育に関する調査を大学生(425名)と地域社会の一般人(296名)を対象に行いました。これは教育開発国際協力研究センターと アフガニスタン教育大学との初の共同研究になります。
カブール教育大学前期試験の様子
カブール教育大学前期試験の様子 カブール教育大学図書室(蔵書数約1,000冊)
カブール教育大学図書室(蔵書数約1,000冊)
25歳の学生(元ムジャーヒディーン兵士,16歳のとき右脚に砲弾を受け負傷)
25歳の学生(元ムジャーヒディーン兵士,16歳のとき右脚に砲弾を受け負傷)

インドネシア共和国の知的障害養護学校及び自閉症学校における障害児教育協力
-教育開発国際協力研究センター

  中田英雄教育開発国際協力研究センター長を研究代表者とする平成17年度科学研究費補助金(基盤研究(A)(1)) 「途上国における特別支援教育開発の国際協力に関する研究」の一環として,8月7日~11日までインドネシア共和国スラバヤ市の知的障害養護学校と自閉症学校において 協働授業研究会が開催されました。インドネシア側の参加者は校長,教師,行政関係者,大学教員,保護者,学生など250名でした。日本側から9名が参加しました。 この協働授業研究会 は,平成16年6月から9月まで教育開発国際協力研究センターに外国人研究員として留学したSujarwanto講師(スラバヤ国立大学)が中心となって開かれたもので, インドネシア国民教育省,スラバヤ国立大学,スラバヤ教育委員会の協力が得られました。   知的障害養護学校では,①北村博幸教諭(附属大塚養護学校)と泉慎一教諭(東京都立あきる野養護学校)による算数の研究授業と, ②インドネシア人教員による算数と体育の研究授業が公開されました。それぞれの研究授業の反省に基づいて,日本とインドネシアの教員が一緒に授業を計画し, 一緒に指導案を作成しました。その協働指導案をもとに,③泉慎一教諭とインドネシア人教員が算数の協働研究授業を,④佐々木正志教頭(茨城県立鹿島養護学校)とインドネシア人教員が体育の協働研究授業を行いました。 授業直後の研究協議会では,「よい授業とは何か」について教師,校長,保護者,大学教師,行政関係者,学生のグループに分かれて話 し合いを行い, その結果をグループごとに発表しました。日本では当たり前のように行なわれる授業研究ですが,インドネシアで行われることはありません。   閉会式では,参加者全員に参加修了証が授与されました。 インドネシア国民教育省初等中等教育局のMujito特殊教育部長からは「協働研究授業は障害児教育の質の向上のために有効であるので,今後も継続して欲しい」との要望がありました。   協働授業研究会に先立ってスラバヤ国立大学で講演会が開かれ,倉本義則助教授(京都女子大学)が日本の知的障害者の就労について講演しました。 インドネシアでは知的障害者が就労することはほとんどないため,聴衆から質問が相次ぎました。   泉教諭があきる野養護学校の施設設備を紹介すると聴衆がどよめき,羨望の声が上がりました。 泉教諭が障害の重い知的障害児の指導場面を動画で紹介し,聴衆に強いインパクトを与えました。   自閉症学校では,山本淳一教授(慶応義塾大学)と竹内康二教育開発国際協力研究センター研究員が自閉症児の個別指導法について講演しました。 講演にはインドネシアの自閉症学校教員27名,保護者17名,福祉関係者2名が参加しました。3名のインドネシア人教員と山本教授らが一緒に個別指導をするなかで互いの指導法を紹介し合いました。 この学校の校長はアンケートの中で,「近年インドネシアでは 主要都市を中心に自閉症児の早期療育の重要性が理解されるようになり,スラバヤ市には15校の自閉症学校があるが, 教員が自閉症児教育の研修を受けられる機会がほとんどないので今回のような活動は教員にとってとても重要な意義があった。今後も継続的に実施してほしい」との感想を述べました。   今回の協働授業研究会開催にあたり元筑波大学留学生4名が通訳として参加してくれました。今後も元留学生と連携して協働授業研究をインドネシアで推進していきます。
北村博幸教諭の算数授業
北村博幸教諭の算数授業 泉慎一教諭とインドネシア人教諭による算数の協働研究授業
泉慎一教諭とインドネシア人教諭による算数の協働研究授業)
インドネシア教諭の体育授業
インドネシア教諭の体育授業
佐々木正志教諭とインドネシア教諭の協働体育授業
佐々木正志教諭とインドネシア教諭の協働体育授業

第9号
(平成17年5月11日
通巻1101号)

途上国に派遣される現職教員への研修会が開催される-JICA青年海外協力隊・文部科学省・教育開発国際協力研究センター 主催-

  教育開発国際協力研究センター(CRICED)は,国際協力機構(JICA)青年海外協力隊(JOCV),文部科学省と共催し,途上国に派遣される現職教 員への研修会を4月12日(JICA国際協力総合研修所国際会議場)と13日(東京キャンパス内のCRICED東京分室及びG棟501教室)に開催しまし た。この研修は,文部科学省国際教育協力のための拠点システム事業「派遣現職教員支援課題」(代表:礒田正美助教授(人間総合科学研究科))として実施す るもので,平成17年度に途上国へ派遣される小・中・高等・養護学校の現職教員全84名が参加しました。
今回の研修会では,インターネットを利用して途上国と我が国の教室間を結ぶ国際理解教育,開発教育に関わるセミナー,現職教員特 別参加制度による帰国隊員による報告会,複式学級と授業研究に関わるセミナー,CRICEDが開発した国際教育協力アーカイブス内の拠点システム成果活用実習,途上国における教育 活動を相互支援するためのICT能力拡充実習を行いました。今後ともCRICEDは,途上国に派遣される現職教員を支援していきます。
集合した青年海外協力隊
集合した青年海外協力隊

アフガニスタン国の障害児教育協力  -教育開発国際協力研究センター-

  中田英雄教授(教育開発国際協力研究センター長)は,平成17年度連携融合事業の一環として3月28日から4月11日までJICA(国際協力機構)短期専門家として派遣されました。 派遣の主要な目的は,アフガニスタンにおける障害児教育の改善を図ることでした。滞在中にアフガニスタン高等教育省からカブール教育大学に障害児教育学部の設置 と教員5名を承認する正式文書が届き,学部設置に向けて尽力してきた関係者にとって大きな喜びとなりました。
平成16年10月から平成17年1月まで教育開発国際協力研究センターの外国人研究員として滞在したアラム・バヤン助教授が障害児教育学部学部長代行に指名されました。視覚障害,聴覚・言語障害,身体障害,知的障害の4つのコースを4名のスタッフがそれぞれ担当することになりました。中田英雄教授は,学長を交えた会議でカブール教育大学内に障害児教育 学部設置準備委員会を設け,全学的な支援体制を築くように要請しました。その結果,障害児教育学部のスタッフが中心になってカリキュラムを開発すること,教員用及び学生用の教科書と障害児教育事典,手話事典を平成17年10月までに 編纂することが決まりました。
アフガニスタンには,公立盲学校が1校と私立聾学校が1校あるだけで,障害のある子どもたちの教育制度はほとんど整備されていま せんし,障害のある児童生徒の実態は不明です。盲学校には,日本をはじめ外国の支援を受けたスクールバス4台があり,カブール市内の児童生徒や成人の送迎をしていました。聾学校に は,日の丸の貼られたオーディオメータがありました。ユニセフの金澤大介氏(プラニング・オフィサー)によると17歳以下の子どもの2.5%~3.0%に なんらかの障害があるということでした。また同氏は,障害のある子どもと障害のない子どもが同じ教室で学習できるように初等・中等教育局と協力して Inclusive Educationを全国的に展開する予定であると語りました。
教育開発国際協力研究センターは,今後もJICAとの連携融合事業を継続し,カブール教育大学障害児教育学部の開校を目指して教材開発分野の教育協力を推進していきます。
導入された盲学校のスクールバス
日本及び外国の支援で導入された盲学校のスクールバス
点訳コーランの授業
点訳コーランの授業
第4号
(平成17年2月23日
通巻1096号)

国際教育協力拠点システム構築事業国内報告会及びJapan Education  ForumⅡが開催される-教育開発国際協力研究センター-

  教育開発国際協力研究センターは,文部科学省拠点システム事業の中核センターとして平成16年度拠点システム構築事業国内報告会とJapan Education ForumⅡを学術総合センター(一橋記念講堂)で開催しました。
  2月7日に文部科学省,広島大学との共催で開催された国内報告会では,拠点システム18事業の成果が口頭発表,ポスター発表,分科会の3つの形式で報告されました(参加者約160名)。
  井上正幸文部科学省国際統括官より,拠点システム事業の目的が日本の教育経験や協力経験を整理し,協力モデルを内外に発信することであり,関係者は組織的・体系的に教育協力に取り組んで欲しい旨の挨拶がありました。 中田英雄教育開発国際協力研究センター長は,閉会に際して,拠点システムの基本方針等を再確認し,新たな気持ちで来年度の拠点システム構築事業に取り組みたいこと,さらに拠点システムを維持し,発展させるために学会の創設が必要であることを述べました。
  2月8日は,文部科学省,外務省,広島大学との共催でJapan Education ForumⅡが開催されました。フォーラムのテーマは,女子教育でした(参加者約200名)。
  日本,アフリカ,アジア及び中南米の関係者が,女子教育の現状を述べ,日本側関係者及び参加者とともに討論を繰り広げました。 油田信一副学長は,フォーラム終了後のレセプションで挨拶し,拠点システム構築事業報告会及びJapan Education ForumⅡが成功裡に終わった こと,さらに本学が同センターを中心にして国際教育協力を推進していくことを述べました。
総合討議の様子
拠点システム全18事業代表者とJICA,JBIC関係者による総合討議を司会する潮木守一(桜美林大学)拠点システム運営委員会委員長
第3号
(平成17年2月9日
通巻1095号)

国際協力シンポジウム
「教育の質的改善への課題-数学的識字力(Numeracy)の育成に焦点を当てて-」開催される

  教育開発国際協力研究センターは,1月23日(日),「教育の質的改善への課題-数学的識字力(Numeracy)の育成に焦点を当てて-」と題する国際協力シンポジウムを国際協力機構(JICA)国際総合研修所国際会議場(東京・市谷)で開催しました。
  数学的識字力Numeracyは,「万人のための教育」(1990)以来,識字力Literacyと並ぶ教育協力の主要課題に数えられています。 その改善方略を探ることを目的にしたこのシンポジウムは,柳孝文部科学省大臣官房国際課国際協力政策室長,萱嶋信子国際協力機構人間開発部基礎教育グループ長を来賓に,数学教育関係者・国際協力関係者など 146名(海外26名,本学12名)が参加して実施されました。
  第一部の基調講演では,異文化的視野,教育政策的視野,そして持続可能性を視野に3名の招待講演者がNumeracyとは何か, それがなぜ必要かを論じました。そこでは,経済開発機構(OECD)による学力の国際比較調査PISAで記された「生きるために必要な数学的識字力」がNumeracyであるとの 見解が提示されました。そして,その育成は開発途上国各国の状況において特に求められることが明らかにされました。
  第二部では,日本における義務教育普及過程ではNumeracy観が計算技能から生活に役立つ思考力へと変遷したことが指摘され ました。
  第三部では,開発途上国の招待講演者2名から各国における数学的識字力の育成課題が述べられ,その改善のために日本の授業研究と 指導法が広く学ばれていることが報告されました。
  第四部のパネルディスカッションでは,現在進行中のJICA基礎教育協力プロジェクトの16件中12件が数学的識字力育成を課題にしていることが紹介され,実施されてきた数々の個別協力モデルを体系化することの必要性が指摘されました。 さらに途上国の文化状況を前提に,限られた予算で実施する協力方略として日本と途上国の拠点大学を介しての南南協力の有効性が提案されました。
シンポジウムの様子
Innumeracyが開発途上国の自立への障害となっていることを指摘し,その改善の必要を提言する柳孝文部科学省大臣官房国際課国際協力政策室長

ボスニア・ヘルツェゴビナの3名の先生が附属坂戸高等学校を訪れる

  12月14日,教育開発国際協力センター(CRICED)の活動の一環で,ボスニア・ヘルツェゴビナから来日しているValentina MINDOLJEVIC先生,Ljubomir PETKOVIC先生, Karmelita PJANIC先生の3名が附属坂戸高等学校を訪れました。
  一行は,3,4限に情報Aの「知的所有権の保護」と「セキュリティと個人の責任」の授業を,5,6限には数学Ⅰの「三角比」の授業をそれぞれ見学しました。 情報Aの授業では,コンピュータで作業している生徒と英語でコミュニケーションをとる機会もありました。
  授業見学の後には,一行と同校の教員との間で話し合いの場が設けられ,お互いの国の教室文化や教育行政,入試制度など,幅広いことについて意見交換が行われました
授業見学の様子
授業見学の様子
第2号
(平成17年1月26日
通巻1094号)

「開発途上国における現職派遣教員の活躍」シンポジウムが開催される
-文部科学省,教育開発国際協力研究センター主催-

  文部科学省国際教育協力のための拠点システム事業「派遣現職教員支援課題」を推進する教育開発国際協力研究センター(CRICED)では,文部科学省と共催し,国 際協力機構(JICA)青年海外協力隊(JOCV)事務局の協力を得て「開発途上国における現職派遣教員の活躍」シンポジウムを1月6日,東京キャンパスG棟501教室 にて開催しました。
  参加者は派遣現職教員,協力隊員,大学関係者を中心に152名でした。開式では,文部科学省井上正幸国際統括官が派遣現職教員特別参加制度への期待を述べ,JICA 松岡和久理事は制度及び派遣教員に対する謝意と基礎教育分野における協力の必要を述べました。
  シンポジウムは3部で構成され,第1部では,エクアドル,ザンビア,セネガル,パラグアイ,ブルガリアからの帰国現職教員が任国における活動を報告し,文化の違 いを乗り越えて職務遂行した現職教員ならではの活躍ぶりを知ることができました。第2部ではカンボジア・バッタンバンの小学校と長野県小諸市内の小学校を結 んだインターネット利用による国際理解教育事例が報告され,帰国後の活動の広がりが示されました。第3部では文部科学省国際協力政策室,青年海外協力隊事務局, 教育委員会,派遣現職教員,派遣専門家をパネリストに,派遣の一層の推進と,派遣経験を帰国後に活用し得るようにするための方策が話し合われました。
  討議の締めくくりでは,教育開発国際協力研究センターは,文部科学省,教育委員会,国際協力機構を結ぶハブとしての 本学教育開発国際協力研究センターの役割の重要性と,派遣現職教員の派遣前・派遣中・帰国後の支援とネットワークの強化を表明しました。
井上正幸国際統括官の挨拶
主催者代表挨拶をする文部科学省井上正幸国際統括官