CRICED University of Tsukuba

筑波大学教育開発国際協力研究センター Center for Research on International Cooperation in Educational Development

2025.4.10

チリ教育大臣が礒田正美教授支援による算数教育改善プロジェクトを発足、協定校チリ大学式典ではチリ大学学長、駐チリ全権大使が祝辞。大統領が称賛。

4月10日午前、チリ教育省により表記プロジェクト発足式典が開催され、Nicolás Cataldo(ニコラス カタルド)教育大臣が、国家教育改善政策として、本学国際局礒田正美特命教授監修算数教科書Sumo Primeroを国定採用し、算数教育改善計画(2年間)を進めることを報道発表されました。 式典にて、教育大臣は「Sumo Primeroは認知革命への道を開きます。私たちは今日求められる思考様式に挑みます。この計画では、私たちチリ人の大学と海外(筑波)大学、様々な機関が日々協力し合う状況のもと、私たちは質の高い教育を推進する挑戦へのモチベーションを高め、喜びを享受します。 国が策定した教育政策がいかに実を結び、私たちにとって最も大切な子どもたちのために、その目標をいかに達成するかを示します。」と述べられました。

新自由主義、バウチャー制で知られるチリの教科書制度は、従来、教育省公募に各社応札し、学年ごとに2社を政府が選定、公立学校は学校毎にそのどちらかを選択し配布を受ける仕組みです。 結果、学年間で整合せず、学習を系統的に進めようもなく、数学的な見方・考え方を育てることも、よい実践を相互共有し改善することも難しい状況でした。 チリはOECD加盟国内で最も格差の激しい国として知られ、その改善に数学的リテラシーは不可欠です。 礒田教授監修算数教科書Sumo Primeroは、既に前政権時代、その制度と併存し、教育省から、自ら考える子どもを育てる教科書として開発され、制度配本外ながら7割の小学校が利用しました。 その評価は高く、現政権は算数科に限りその制度を改め、Sumo Primeroは、チリ全土、15州及び首都州、すべての公立小学校、三万人の先生方、百三十万名の生徒に配布する国定教科書となりました。

本計画(プロジェクト)では、教科書開発にあたったチリ大学数学物理学部数学的モデリング研究所Salome Martinez(サロメ マルチネス)教授代表のもと、筑波大学教育開発国際協力研究センターCRICEDの礒田教授とチリ16州の各大学・機関とが協働し、Sumo Primeroによる算数教育改善研修に取り組み、改定も進めます。

同日夕刻には、筑波大学協定校であるチリ大学主催式典が数学物理学部講堂で開催され、Rosa Devés(ロサ デベス)学長、在チリ日本大使館伊藤恭子特命全権大使等が祝辞を述べられました。大使は、2005年から筑波大学の礒田教授がチリ14大学及び国立教育研究所と取り組んだJICA研修、同期した文部科学省連携融合事業、APEC授業研究プロジェクトで創始された協働の今後の展開への期待を述べられました。 これら事業により、筑波大学附属小学校算数部による算数教科書「みんなと学ぶ小学校算数」(学校図書)の翻訳に取り組まれたバルパライソカトリック教皇大学のSoledad Estrella(ソレダド エストレジャ)教授(現チリ数学教育学会会長)、Raimundo Olfos(ライムンド オルフォス)教授(元会長)をはじめ、多くのプロジェクト関係者との20年来の協働体制が築かれました。

翌日には、バルパライソ州での発足式典がバルパライソカトリック教皇大学学長主催で開催されました。

礒田正美特命教授は、三式典それぞれの場で、Sumo Primeroは数学的な見方・考え方を育てる教科書であり、後の授業で子どもが考える際に活きる見方・考え方を本時の授業で育てることができる系統を備えた教科書であることを解説する講演をされました。加えて、チリCNN科学番組などにも出演されました。

4月15日には、チリ初のセンターオブエクセレンス、フランスCNRS初の海外拠点、チリ大学数学的モデリング研究所開設25周年記念式典が行われ、Gabriel Boric大統領が祝辞の中で、チリ全土の小学生130万人が裨益するSumo Primeroを称賛されました。

写真:教育省・チリ大学提供