日本の教育制度と教育実践
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0 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携

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1 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  PTAは保護者と教師によって構成される組織である。地域によっては在学する子どもを持たない家庭も含めているところもある。
 PTAの役割
①学校の環境整備や教育活動への協力など、学校への保護者の協力を得ること-校庭の環境整備、読み聞かせ活動などの教育ボランティア活動、ベルマークの収集など
②保護者の意見や要望を学校に伝えたり、学校の教育活動についての方針や考え方を保護者に伝えたりすることによる相互理解の促進-学級懇談の開催、役員などによる保護者の要望の学校への伝達、PTA会報の発行など
③教育や子育てなどについての保護者と教師の研修-講演会や研修旅行の実施など
2 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  PTAには、役割に応じて様々な委員会や役員が置かれている。会長はPTAを代表する責任者であり、通常は保護者から選ばれる。副会長は教師、たとえば教頭がなる場合が多い。また、副会長が2人のこともあり、その場合は教師から1人、保護者から1人である。副会長は会長を補佐する。組織は機能別に研修、広報、会計などの委員会や役員が置かれている。また、学年の委員会や学級の委員会も置かれ、学年や学級のPTAとして独自の活動を行っている。
(学校の組織→Ⅵ-19)
3 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  PTAは学校ごとに設けられるが、郡・市、都道府県、・政令指定都市、ブロック、そして全国の連合組織があり、研修活動や広報活動を行っている。とくに、小・中学校のPTAとしては日本PTA全国協議会があり、学校教育と社会教育、家庭教育の連携を深め、青少年の健全な育成と福祉の増進を目的に、全国研究大会やセミナーの開催、広報誌や事例集の刊行、青少年育成事業、優良PTA・功労者の表彰などを行っている。高等学校のPTAの全国組織としては全国高等学校PTA連合会があり、同様の活動を行っている。
4 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  学校への協力活動として奉仕作業がある。校庭や校舎の環境整備、施設設備の保全などの作業を行う。保護者と教師が協力して作業を行うことによって、相互の理解や親睦が深まる効果もある。
5 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  保護者による朝の交通安全指導。
6 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携 ①保護者の代表が学校周辺の危険箇所(公園・道路など)を点検をする 
②警察官も参加して、危険箇所についての情報や意見を話し合う 
③危険箇所マップを作成し、各家庭に配る。
7 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  ①は、小学校の安全対策について、専門家(大学教授)を招いて、講義を受けている。講義は小学校の教室で行われているが、小学校の教師は参加していない。(2004年10月)
 ②③④は、保護者と教師が一緒に行く研修旅行。バスを借り切ったりして、学校、教育施設、文化施設を訪問したりする。教育問題などについての研修や文化的な啓発ばかりでなく、保護者と教師のコミュニケーションと相互理解を促進し親睦を深める効果がある。
②工場見学(学校を出発 2005年6月)
③工場見学(生産施設・リサイクル施設の見学 2005年6月)
④工場見学(乳製品の試食・校長と保護者 2005年6月)
8 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  学級の全家庭を対象に行われる家庭訪問は、通常年度の初め頃に実施される。学級担任教師が家庭を訪問して保護者と懇談する。
 また、長期欠席の児童生徒、学校で事故や事件にあった児童生徒、問題行動のある児童生徒などの家庭に、必要に応じて担任教師や生徒指導担当教師あるいは管理職などが訪問することもある。その場合、教師と保護者の間で問題の共通理解を深め、保護者の要望を把握したり、学校の方針や考え方を説明し理解を得たりすることが大切である。
9 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  家庭訪問の目的は、①児童生徒の家庭環境や地域環境の理解、②家庭や地域における児童生徒の様子の理解、③児童生徒の教育に関する保護者の要望の把握、④児童生徒の教育に関する教師や学校の考え方の伝達である。
(家庭訪問→Ⅴ-31・32)
10 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  定期的な家庭訪問は、1~2週間程度の期間をとり、学校の日課を早めに終了したり、部活動を休止したりして、空いた時間で1日に数軒ずつ訪問するのが一般的である。事前に保護者と連絡を取り、日程の調整をするとともに、地理的に効率よく回れるよう工夫する。
①家庭訪問実施計画
②家庭訪問日程表
11 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  実際の家庭訪問では、保護者と率直な意見交換をすることが大切である。家庭や地域での具体的な子どもの様子を聞いたり、保護者の要望を聞いたりするとともに、教師や学校の考え方をわかりやすく丁寧に伝えることも大切である。また、子どもが普段生活している家庭や地域の様子を観察し、その特徴を捉えることも大切である。接待に気を使う家庭もあるが、過度な接待は断ることが必要である。
①学校から出発する
② ③児童の家
④次の児童の家に向かう
12 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  授業参観の目的は、保護者が学校における自分の子どもの様子や同学級の子どもの様子を理解すること。及び保護者と教師の相互理解を図ることである。
 授業参観の時には様々な人が学校に出入りするので、危機管理が重要である。学校の入口でチェックをし、名前を記帳してもらったり、参観者であることを表示するバッジをつけてもらったりするなどの工夫が必要である。
13 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  一般的な授業参観のパターンである。多くの場合、1学期に1回程度実施される。事前には保護者あてにスケジュールや当日の教科や内容を周知しておくことが必要である。授業参観にあわせて、PTA総会や学年・学級のPTAの行事、学年懇談会、学級懇談会を開くことも多い。それらの案内も事前に必要である。 一定期間、誰でも参観できるような自由参観を行う場合には、その目的や実施方法について学校内外に広く周知しておく必要がある。とくに、地域の人に授業を公開する場合、いつからいつまで、どの授業を参観できるのか、その際どのような注意事項があるのかなどについて、学校だよりや学校のホームページなどを利用して周知する。
 実施に際しては、危険な人物が学校に入り込んだりしないよう、入口でのチェックとともに学校内の巡回などの安全管理が非常に重要である。
 アンケートなどにより参観後の感想や意見を得て、授業改善や学校改善に生かしていくことも大切である。
14 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  授業参観では、参観者が授業の様子を参観するだけの場合もあるし、参観者も授業での学習活動に参加し、子どもや教師と一緒に活動する場合もある。前者の場合、教室の後ろで参観する場合が多い。児童生徒が多く、教室が狭いときには、参観できるスペースを確保できるよう工夫が必要になる。
 保護者が子どもの写真を取ったり、ビデオを撮影したり、また保護者同士の私語によって、授業の妨げになる場合もあるので、そうしたことのないよう、事前に理解を得る。また、授業参観に出席した保護者がわかるよう、名簿などを設置しておき出席者にはチェックしてもらうなどの工夫をする。
15 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  保護者懇談会は、学校の教師と保護者が学校で直接話し合いをする機会である。学級や学年の単位で集団で懇談する場合と、教師と個々の保護者が懇談する場合(個人懇談)、教師と個々の保護者と子どもが懇談する場合(三者面談)がある。個別面談や三者面談は、計画的に行われる場合と、必要に応じて臨時に保護者を学校に呼んで行われる場合がある。学年懇談会や学級懇談会は授業参観とあわせて実施されることが多い。計画的な個別面談や三者面談では目的を明確にし、事前に日程調整をして予定を立てる。
16 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  保護者懇談会では、教師から保護者への教育方針などの説明を行うだけでなく、保護者の要望を聞いたり、一緒に学年や学級の問題、子どもの教育の問題などを検討したり、それらにかかわる情報交換をしたりする。また、それを通じて教師と保護者および保護者相互の相互理解と親睦を深めることができる。
 個人懇談の場合は、個別の子どもの教育問題や進路などについて検討し、共通理解を形成する。たとえば子どもの成績について具体的に教師から説明し、子どもや保護者の希望と照らし合わせて、受験する学校を決めるなどである。
17 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  授業参観の後に開かれた保護者懇談会。
18 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  通知表は学校での子どもの学習と生活状況を記載して、学校から保護者に伝える文書である。児童生徒の学籍および指導の過程と結果の要約を記録する「指導要録」に基づいて作成される。通知表の書式として決まったものがあるわけではない。学校独自に工夫しているところもあるし、地域で共通の書式を用いている場合もある。
 通知表のない学校もある。その場合、学期末に保護者と個人懇談を設けるなどして、子どもの学校での学習や生活について担任から説明する機会を設ける。
(児童・生徒対象の評価→Ⅳ-25)
19 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  学習の記録では、①各教科の観点別評価と評定、②総合的な学習の時間の記録、などが記載される。各教科の評価は「指導要録」において目標に準拠した評価、すなわち絶対評価が採用されている。
20 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  生活の記録では、特別活動の記録や学校での子どもの様子、出欠席の記録、総合所見などを記載する。通知表は担任が作成して、校長の確認を経て、担任から子どもに渡される。保護者は内容を確認したら印を押す。
21 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  通知表については、子どもも保護者も表面的な結果を気にしすぎる傾向がある。通知表を渡すときには、子どものよい点や進歩した点をほめたり、努力を要する課題を示したりしながら、子どもの学習意欲を喚起する工夫も必要である。また、通知表の趣旨や記録の読み方などについて保護者に周知することも大切である。
 この小学校では1・2年生は○で評価を表し、3年生から1~3までの3段階評価で表す。
22 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  連絡帳は学校と家庭の連絡を図る簡便で効果的な方法である。とくに小学校低学年で効果的に活用される。毎日、学級の子どもに共通の連絡は担任が板書したものを子ども自身が書き写す。文字の書けない小学校入学当初は、翌日の予定などを書いた文書を貼り付けるなどする。個別の連絡は、担任が直接連絡帳に記載する。家庭では保護者がそれをチェックし、確認のサインをしたり、家庭から学校への要望や連絡を記入したりする。学校では担任がそれをチェックする。
23 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携 解説なし。
24 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  連絡帳に決まった書式はないが、連絡帳用として市販されているノートもあり、日付の欄、内容の欄、サインの欄などに分けられていたりする。
①6年生 2003年12月
②6年生 2005年1月
③2年生 2003年12月
④3年生 2005年1月
25 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  「帰りの会」「おわりの会」などと呼ばれる、放課前の学級活動の時間に連絡帳を記入する。家庭ではその内容を確認するとともに、学校への連絡を記入する。
 この小学校では、学校で印刷した記入用紙をノートに貼り付けて、それに書き込んでいる。
26 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  学校から家庭に「○○だより」というような名称で、連絡・広報のための印刷物が様々に出されている。ワープロや手書きで作成、印刷され、子どもを通じて配布される。学期・月・週に1回など定期的に出されるものが多い。学校の予定や方針、様々な活動の様子を伝え、保護者の理解や協力を得るのに効果的である。
27 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  「たより」は全校、学年、学級など様々なレベルで出される。また、養護、給食、事務など様々な活動別に出されるものもある。どのような「たより」が出されているかは、学校によって多様である。「学校だより」は全校児童生徒の家庭に配布されるが、場合によっては地域の全戸に配布したいり、回覧したり、あるいは多くの人が見られるよう地域の掲示板に掲示したしたりすることもある。
28 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携 ①学校だより:学校行事や学年の授業のことが書かれている 2004年7月
②学校だより:学校行事や学年の授業のことが書かれている 2004年11月
29 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  学年だより:学年ごとに名前が付けられている。
①1年生=なかよし
②2年生=たいよう
③3年生=あくしゅ
④4年生=パワーアップ
⑤5年生=スクラム
⑥6年生=ハーモニー
30 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携 ①学校だより
②学年だより
③保健だより
④給食だより
31 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携 ①給食だより 2003年10月、②給食だより 2004年10月
③保健だより 2003年12月、④保健だより 2003年11月
⑤PTAだより 2004年7月
32 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  ホームページを設ける学校が増えてきた。ホームページは保護者への連絡ばかりでなく、社会に対して学校を紹介し、学校の説明責任を果たしたり、リンクを通じてネットワークをつくったり、メール通じて情報を獲得したりする、効果的な手段である。
 ホームページには、学校の概要や特色、予定や活動の実際など様々な内容を掲載する。
33 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携 学校のホームページの例である。ホームページは多くの情報を適切に整理し、見やすく提示し、常に新しい情報に更新していくことが大切である。
34 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携 学校から保護者や児童生徒への緊急の連絡には、連絡網が使用される。
 電話による連絡網は、一覧表として各保護者に配布される。保護者は順に次の保護者に電話で伝言を伝えて、全員に情報がいきわたるようにする。留守の場合は飛ばして、次の保護者に連絡する。連絡網の最後の保護者は、連絡が到達したことを担任(連絡網の最初の保護者のこともある)に伝える。
 最近では、メールによって一斉に学校から保護者に連絡を行うこともある。携帯電話のメールを使用する場合が多い。
 いずれの場合も、電話番号やメールアドレスといった個人情報を扱うので、目的以外に使用されないよう注意が必要である。
35 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  幅広い経験と優れた知識・技術をもつ社会人を活用することは、学校教育を多様化し、子どもたちに社会性や勤労観、職業観を育成したり、実技指導の充実を図る上で有効だと考えられる。また、総合的な学習の時間の指導にも有効であるばかりでなく、学校に新しい発想や教育力を取り入れることにより、教職員の意識改革や学校運営の改善につながることが期待されている。
(総合的な学習の時間→Ⅳ-64)
36 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  学校ボランティアの活用では、自治体単位や学校単位でボランティアバンクを設けることが進められている。地域の人々に、ボランティアとして学校に協力できる内容を登録してもらい、学校が必要に応じてそこから人材を探して協力を依頼する。
37 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  特別非常勤講師制度とは、教育職員免許法の定めに基づいて教科の領域の一部にかかわる事項の教授・実習について、各相当学校の教員の相当免許状を有しないものを非常勤の講師に充てることができるという制度である。この場合、授与権者すなわち都道府県教育委員会への届出が必要である。許可を受けた教科の領域の一部に関わる事項については、授業を担当し、試験を行い、成績評価を行うことができる。
38 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  特別非常勤講師や学校ボランティアによる指導などを通じて、子どもたちは専門的な学習や幅の広い学習ができるばかりでなく人間関係の幅を広げたり、地域社会に一員としての自覚を養ったりすることができる。
 環境保護NPOから派遣された講師がビオトープの生態を説明している。
39 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  ボランティアが外国の童話を生徒に話して聞かせている。
40 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携 平成20年度から文部科学省により「学校支援地域本部事業」が開始され、2176本部が設置された。
→文部科学省・学校支援地域活性化推進委員会「「みんなで支える学校 みんなで育てる子ども」-「学校支援地域本部事業」のスタートに当たって-」(平成20年7月1日)
(http://www.mext.go.jp/a_menu/01_l/08052911/004/002.htm)
41 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携   「地域コーディネーター」は、学校支援ボランティアに実際に活動を行ってもらうなど、学校とボランティア、あるいはボランティア間の連絡調整などを行い、学校支援地域本部の実質的な運営を担うもので、学校支援地域本部の中核的役割を担い、その成果を左右する重要な存在。「学校支援ボランティア」は、実際に支援活動を行う地域住民。「地域教育協議会」は、学校支援地域本部においてどのような支援を行っていくかといった方針などについて企画、立案を行う委員会です。その構成員は、学校やPTA、コーディネーターやボランティア代表をはじめ、公民館等の社会教育関係者、自治会や商工会議所等地域の関係者などが考えられるが、具体的には、市町村教育委員会がそれぞれの実情を踏まえて判断する。子どもの教育について話し合う組織がすでに地域に設けられている場合には、その既存の組織を地域教育協議会に替えることも可能。
→文部科学省・学校支援地域活性化推進委員会「「みんなで支える学校 みんなで育てる子ども」-「学校支援地域本部事業」のスタートに当たって-」(平成20年7月1日)
(http://www.mext.go.jp/a_menu/01_l/08052911/004/002.htm)
42 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  職場体験は、生徒が公的機関や企業等で実際の仕事を体験することである。進路指導の一環として特別活動で取り組まれたり、総合的な学習の時間で取り組まれたりする。実際の仕事を体験したり、その職業について調べたりすることを通じて、その職業についての理解を得るだけでなく、職業観・勤労観を育成し、さらには進路選択に向けて生徒の適性認識を深めることをねらいとしている。職場体験を実施するには、地域の機関や事業所の協力が必要である。
→文部科学省「中学校職場体験ガイド」
(http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/05010502/026.htm)
(特別活動→Ⅳ-49)(総合的な学習の時間→Ⅳ-64・65)
43 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  職場体験を実施している中学校は全公立中学校の95%近くに及ぶ。その中で学年別では2年生で実施している学校が最も多く、日数では1日間が最も多く29%である。4日以上実施している学校も20%近くある。
→国立教育政策研究所生徒指導研究センター「平成18年度職場体験の実施状況等調査(平成19年3月現在)」
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/07070908/007/005/001.pdf)
44 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  教育課程への位置づけでは「総合的な学習の時間」で実施している学校が84%と圧倒的に多い。ついで特別活動での実施であり、17%である。教育課程には位置づけず、長期休業中などに実施している学校も8%ある。参加形態では、原則として当該学年の全員が参加している場合がほとんどである。
→国立教育政策研究所生徒指導研究センター「平成18年度職場体験の実施状況等調査(平成19年3月現在)」
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/07070908/007/005/001.pdf
45 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  職場体験の場面である。職場体験には事業所とその職員の協力が不可欠である。職場体験の実施前に事前指導を行い、また終了後には、体験の成果をレポートにまとめさせるなどして事後指導を行う。
①幼稚園、②本屋、③郵便局、④パン屋
46 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  学校の教育課程が、地域の実態や特色に応じたものであるべきことは、教育課程審議会答申や新学習指導要領において繰り返し述べられている。とくに総合的な学習の時間においては、(1)地域の特色に応じた学習課題、(2)自然体験やボランティア活動などの社会体験、見学や調査などの学習活動、(3)地域の人々の協力を得た指導体制、(4)地域の教材や学習環境の積極的な活用、などの面で学校が地域の特色や資源・教育力を生かすことが求められている。
 学校において地域の実態・特色に応じた教育課程を編成するためには、学校がおかれている地域の実態を把握し、その特色を明らかにすることが前提となる。地域の自然環境、社会環境、地域にある施設あるいは人材、そしてそこにおける子どもの生活について情報を収集することである。地域教育連絡協議会などは、そのような情報を得る格好の機会として活用できよう。
47 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  小学校第3学年および第4学年の社会科では地域についての学習が中心になっている。これは、小学校1、2年生での生活科の学習を発展させるものであるとともに、その後の社会科の基礎となるものである。総合的な学習の時間との連携が図られることもある。
48 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  小学校第3学年および第4学年の社会科では、地域の自然、社会環境、産業、安全、生活などを観察・調査し、その結果をまとめ発表する。
49 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  地域学習では、実際に地域に出かけて地域の様子を調べてまとめたりする体験的な学習が行われる。地域の人々の協力が必要である。
 この炭焼き学習を開始するときに、地域住民が窯の作成や、炭焼き方法を、指導した。
50 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  学校評議員制度は学校教育法施行規則第23条の3で定められている。学校評議員は当該学校の職員以外のもので教育に関する理解及び識見を有するもののうちから、校長の推薦により教育委員会が委嘱する。学校評議員は、校長の求めに応じて学校運営に関して意見を述べる。学校が保護者や地域住民の意向を把握し、反映するとともに、その協力を得て学校運営を行うという観点から、学校外の有識者等の参加を得て、校長が行う学校運営に関し幅広く意見を聞き、必要に応じて助言を求めるために設けられた制度である。
51 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携 学校評議員を設置している学校は増加している。
学校評議員(類似制度を含む)を設置している公立の学校は35,042校(82.3%)、設置を検討している公立の学校は2,284校(8.1%)となっており、学校種別にみると、小・中学校で約88%、高等学校・盲・聾・養護学校で約92%の設置率となっているが、幼稚園は36%程度である。
→表は
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/19/03/07032712/001/001.pdf
(学校評議員→Ⅱ-59)
52 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  2006年度では全国の公立学校評議員の人数は153,714人であり、1学校当たり4~6人とする学校が最も多くなっている(64.8%)。学校評議員の職種等としては、保護者(15.6%)、自治会等関係者(17.7%)、社会福祉施設・団体関係者(16.0%)、社会教育団体関係者(14.9%)、学識経験者(11.3%)の順となっている。国立学校では学識経験者、同窓会関係者、地元企業関係者の割合が多い。
→http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/19/03/07032712/001/008.pdf
53 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  多くの学校では、1学期に1回程度学校評議員の会合を開催している。学校から教育活動等について説明し、あるいはテーマを設定して情報を示し、評議員の意見を求めたり、意見交換を行ったりする。会合ではなく、個別に意見を求める場合もある。
→写真左から、教務主任・副校長・校長・評議員3名。
54 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  学校運営協議会制度は「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の一部改正により、2004年に発足した。学校評議員とは異なり、校長の基本方針を承認したり、教職員の任用に関して教育委員会に意見を述べたりする明確な権限を持った会議体として制度化されている。学校運営協議会の設置されている学校を地域運営学校あるいはコミュニティ・スクールと呼ぶことがある。
→http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/21/06/__icsFiles/afieldfile/2009/06/29/1279651_1.pdf
55 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  学校開放とは、学校の保有する資源や教育力を地域社会に開放し、地域の人々の交流の場、地域コミュニティの拠点として学校が機能することである。1996年7月の中教審答申は「学校は、地域社会の子供や大人に対する学校施設の開放や学習機会の提供などを積極的に行い、地域社会の拠点としての様々な活動に取り組む必要がある」としている。また、1996年4月の生涯学習審議会答申でも、学校が地域社会の一員として、積極的に地域社会に貢献していくことの必要性が指摘された。これまで進められてきた学校施設の開放をいっそう拡大したり、学校施設を複合化する、あるいは教職員が地域に積極的に貢献することである。
 これまで運動場や体育館を放課後や休業日に社会体育などに開放することが多く行われてきたが、最近では余裕教室の活用や、複合施設化、公開講座による学校開放などが進められている。
(複合施設化→Ⅶ-57・58)
56 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  子どもの減少に伴って余裕教室が増加し、社会教育施設、児童福祉施設、社会福祉施設などへの転用が進んでいる。
→表は 
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyosei/yoyuu.htm
57 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  学校図書館の開放も徐々に進んでいる。
→表は、文部科学省学校図書館の現状に関する調査(平成14年度)
58 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  学校開放の中でもっとも一般的なのが、運動場や体育館の開放である。社会体育や地域の行事、スポーツ少年団の活動などに活用されている。利用申請の手続きを定め、利用後の整備をきちんとするなどのルール作りを行い、管理責任を明確にしておく必要がある。
①②教室を児童クラブとして使用している 
③校庭で遊ぶ児童もいる 
④親が子どもを迎えに来る 
*この児童クラブでは、登録された1年生から3年生までの児童を放課後17時まで預かっている。児童クラブの運営は市が行い、職員2名を配置している。
59 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携 学校とともに公民館や図書館などを含めて文教施設を複合化しようとするのが、学校施設の複合化である。文部省は、1991年3月、学校施設の複合化における施設計画、施設設計及び施設管理上の具体的留意事項を都道府県教育委員会に通知している。それによると、学校施設の複合化とは、「同一建物内又は同一敷地内に、学校施設と社会教育施設、文化施設、スポーツ施設その他の文教施設を、相互に機能的連携を保つ形態に整備することである」。その目的は、(1)地域における総合的な生涯学習基盤の整備、(2)学校教育の活性化を促すための学校教育環境の質的な向上、である。そして、その計画に際しては、児童生徒や地域住民の学習の場にふさわしい環境を確保する観点から、学校施設との機能的な連携や空間的な一体化が可能で、学習環境を高度化するようなものを複合化する対象施設として選択すべきであり、学習環境に生涯又は悪影響を及ぼす施設との合築は避けることとしている。また、1997年10月の学校の「複合化及び高層化に伴う学校施設の計画・設計上の配慮について」では、「良好な学習環境や安全性を確保する方策、公共施設の利用者が利用しやすい建物とするための配慮などを開設したほか、高齢者福祉施設との複合的整備では、児童・生徒と高齢者の交流を想定して計画することなど」が指摘されている。
60 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  小学校と公民館及び図書館の複合施設である。学校の教育活動に図書館やホールなどを利用することができる。また、公民館の利用者が学校の余裕教室を活用することも容易になる。この学校では、職員室が図書館に隣接し、廊下とカウンターで仕切られている形になっており、地域に開かれている。
①左側:小学校、右側:図書館・公民館
②図書館
③職員室と図書館
④小学校と共同スペースの仕切扉
61 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  中学校と福祉施設(特別養護老人ホーム)の複合施設である。総合的な学習の時間や特別活動などで福祉施設を活用したり、福祉施設の利用者と交流したりすることができる。また、温水プール・体育館・格技室を、地域に貸し出している。
①ビルの全体 ②③老人ホームとの交流会 
④体育館・温水プールの利用を、地域に開放している 
⑤中学校の体育館と入り口
62 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携 子ども会は、地域の子どもの健全育成を目的とする少年団体であり、レクリエーション活動やボランティア活動、研修活動などを行っている。子ども会には子ども自身の運営組織と保護者の運営組織がある。自治体には子ども会連合会があり、全国的組織として全国子ども会連合会がある。全国子ども会連合会では、
①子ども会活動の指導及び育成
②子ども会活動に従事する指導者及び育成者相互の連絡連携
③子ども会活動の指導者の育成及び活動
④子ども会活動充実のために必要な調査研究及び資料の刊行
⑤子ども会活動充実振興のための関係団体との連携協力
⑥子ども会安全会活動に関する事業、などを行っている
63 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  子どもの減少や、地域社会の変化に伴って子ども会数、会員数は減少する傾向にある。
→表は 社団法人全国子ども会連合会調査、『日本子ども資料年鑑』各年度版による
64 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  子ども会への加入割合は、小学校、中学校とも低下してきている。しかし、小学校では約45パーセントの子どもが加入しており、その他の団体への加入と比べ非常に高い割合である。中学校では加入団体としてはスポーツ少年団の割合が多く、子ども会はそれについで第2位である。しかし、どの団体にも加入していない子どもが80パーセント以上を占める。中学生の場合、学校の部活動に参加している割合が高いことがこの結果につながっていると思われる。
→出所:内閣府「第2回日本の青少年の生活と意識に関する基本調査」(平成13年)
65 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  子ども会は様々な活動を行っている。この子ども会は町の教育部に所属し、会員は小学生112名・中学生60名、月100円の会費の他に、毎月廃品回収をして活動資金にしている。季節ごとに、親子夏祭り・一日キャンプ・敬老会・もちつき・お別れ会などの活動がある。(集団登校→Ⅸ-30)
①学年ごとに集合 ②神主さんのお清め ③おみこし ④しし舞い ⑤山車 ⑥⑦⑧親子で廃品回収をしている
66 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  学校と地域の様々な施設や機関・団体が連携するためには、ネットワークの整備が必要である。そのために、平成8年7月の中教審第一次答申で提言されたのが「地域教育連絡協議会」である。
 地域教育連絡協議会は、市町村教育委員会等が核となり、PTA、青少年団体、地元企業、地域の様々な機関・団体や学校等の参加を得て設置される。その役割は、地域社会における様々な活動の連絡・協議とネットワークづくりであり、いわば地域ぐるみでの子育ての推進である。さらに、同答申では、連絡・協議ばかりでなく、自ら各種の情報提供や相談活動、指導者やボランティアの登録・紹介などの事業を行う「地域教育活性化センター」の設置も提言している。また、平成10年9月の中教審答申では、学校評議員を地域教育連絡協議会の構成員に加えるなどにより、学校区単位での教育行政に対する要望の把握とそれに基づく地域社会とのきめ細かな連携の促進に努めるよう提言している。
67 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  地域教育連絡協議会は子どもにかかわる地域の関係諸機関の連携組織である。
68 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  大阪府では各中学校区に「地域教育協議会」を設けている。学校と家庭・地域の連携による総合的な教育力の再構築をめざし、地域住民が地域の教育課題について話し合い、協働した取組みを進めるよう、教育コミュニティづくりの中核となる推進組織である。小・中学校、幼稚園、保育所、養護教育諸学校、PTA、青少年育成団体、福祉協議会、自治会、子育てグループ、NPO、企業、行政機関等の関係者などから委員を出すこととしている。
→http://www.pref.osaka.jp/kyoisomu/fivedays/kyougikai.htm
69 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  地域教育連絡協議会は、地域の様々な人々や機関が協働し、学校教育への支援、地域での子育て支援、情報誌の発行、地域教育活動・行事の実施など様々な活動を行う。
①カルタ取り ②コンサート ③模擬店
70 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  子ども110番の家は、ある自治体の取り組みとして始められたものが全国に広まった。110は、警察の緊急電話番号である。通学路に不審者が出没したり、子どもの誘拐・誘拐未遂事件などが増える中で、地域社会全体として子どもの安全を見守り、子どもが危険を感じたときに身近なところに助けを求められるようにするところに意義がある。
71 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  一般の民家やコンビニエンスストアなどが子ども110番の家として協力している。子ども110番の家では、子どもが駆け込んできたら子どもを保護し、いつ、どこで、何があったのか、不審者の特徴はどうかなどを聞き、警察に通報し、情報を伝える。
72 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  子ども110番の家を設置してあること、不審者を見たり、危険な目に遭いそうになったり、事件に巻き込まれたりしたときには助けを求められることなどを、子どもたちにしっかり伝えておくために、パンフレットなどを用意する。
→「みんなで気をつけようね」より
http://www.npa.go.jp/safetylife/seiankis8/text.pdf
73 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  子ども110番の家では、よく目に付くところにステッカーを貼っている。子どもが日ごろからどこに子ども110番の家があるか目にしておくことが大切である。
74 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  義務教育は無償であり、国公立の小、中学校では授業料は徴収されないし、教科書も無償配布される。しかし、教科書以外の教材や、実験・実習費のほか、学校行事にかかる費用などを保護者は支出している。また多くの小、中学校で学校給食を実施しており、その費用の一部も保護者が支出する。自治体や学校によってはこれらを銀行口座からの自動引き落としにしていることもあるが、月に1回程度学級費として学級単位で直接徴収している場合もある。
 経済的に困難な家庭では、これらの費用を負担できない場合もある。そうした家庭に対しては生活保護の制度があり、「教育扶助」として義務教育に伴って必要な学用品、通学用品、学校給食費などに対する補助を受けることができる。
*以上の費用のうち、保護者が個別に支出するものもあるが、学校などで集金して支出するものもある。その場合、銀行口座からの引き落としや担任による学級費としての徴収などが行われる。
(学級費→Ⅴ-41)
75 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  保護者は子ども一人当たり、公立小学校で年間約6万円の学校教育費と約4万円の学校給食費を支出している。公立中学校では学校教育費がおよそ13万円、学校給食費がおよそ4万円となる。私立小学校では学校教育費が75万円を超え、私立中学校では学校教育費が95万円を超え、公立との間の差は大きい。(学級費の内訳の例→Ⅴ-42)
76 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  公立小学校の保護者支出の学校教育費の内訳を見ると、学用品・実験実習材料費が最も多く、ついで通学用品費である。公立中学校では修学旅行・遠足・見学費が最も多く、ついで教科外活動費、学用品・実験実習材料費、制服となっている。中学校では制服のある学校が多く、また修学旅行に遠方に出かけること、教科外活動としてクラブ活動が盛んであることなどによって、小学校と支出の傾向が異なる。
→表は 学校種別子どもの学習費総額(H18文科省「子どもの学習費」調査) 
77 Ⅶ 学校と地域・保護者との連携  学級費に関する連絡や学級費の受け渡しには、写真のような袋がよく用いられる。学級担任は徴収する総額、内訳、徴収期日などを記入して、子どもを通じて保護者に連絡する。保護者は徴収額を入れて、子どもを通じて学校に提出する。提出された金額を担任がチェックして領収の印を押し、必要な場合はおつりを袋に入れて返金する。
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